美しい薔薇も見ないで/ハァモニィベル
 

いったいお前は何を見ているのだ

     *
通りで道に迷うチューハイに酔った地理学者の
妻への垂れ下がった無関心 そして
その妻が向ける夫への吐息の爪か

それとも、頑張りすぎた恋物語に傷ついた少女の
悲観する爪先が叫ぶ金切り声の躊躇か

それとも、乳母車に乗った少年兵の
文字数の足りない憤怒の小銃か

     *

一輪の薔薇を背負った猫よ
窓辺でいったい何を見ている

     *

歴史が吹き飛ばしたものか

それは腐敗する前の肉親たち

埋葬した呵責を上書きする垂れ流しの癒し

焦げた絨毯の上で孵ったのは、
バーコードで分かち合う飢渇した豊穣

     *

嗚呼、猫よ。薔薇を背負った猫よ

どうして薔薇を背に負ったまま
盲目の夜をまえに、盲目のおまえは
ずっと外を眺め続けているのか



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