詩を救うための音楽??榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』/葉leaf
らの詩に音楽的な様式を付与しているのは、何よりも自らの不条理な衝動や疎外意識などを叫びたてるためである。彼女がその詩作法においてノイズを狂ったように奏でることを意図していることからも分かるように、安穏で幸福で居心地の良いものなど破棄しているのだ。その居心地の悪さや危機意識を叫びたてる媒体として、音楽的な詩編が必然的に要求されたのである。つまり、榎本の詩には内的推進力が伴っており、動的な強度も備えていると言えよう。そして、榎本の詩は、自動筆記的な様式に音楽的美を加え、さらにその音楽的美は現代音楽的な美であったという意味で新しく異質なのである。そのような異質で強度のある作品は、社会の多様性を増し、社会
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