詩を救うための音楽??榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』/葉leaf
社会の均質化圧力に抵抗し、芸術の大衆化を防ぐ役割を果たすという意味で、現代社会の役に立っていると言えよう。
3.大衆化の先へ
さて、ここまで、「芸術の大衆化」を前提に話を進めてきたのであるが、現代の芸術はそれよりもさらに先に進んでいるのではないだろうか。インターネットの普及は、マイナーな趣味を持つ者同士が情報を共有するプラットホームを作り上げた。いくらマイナーで昔だったら同朋を見つけるのが難しく人口がスパイラル的に減っていく運命にあったような趣味でも、簡単に仲間を見つけることができて、その趣味を放棄しなくても済むようになっている。現代詩もまたその恩恵にあずかっていて、すぐれた詩人たちが地域を超えて瞬時にやり取りができるようになっているし、それによって交流、新たな活動の立ち上げが容易になっている。榎本櫻湖の詩は大衆社会に抵抗するものであったが、このような小さな島同士が緩やかに連結するようになった社会に対してどのように反応していくのか、それが楽しみであるし、それは何も彼女の作品に限らず、現代詩自体の今後の運動の課題でもあるだろう。
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