詩を救うための音楽??榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』/葉leaf
っているある種の「調性」を剥奪するということ。榎本の詩が「無調」であるのは、そのように、あらゆる領域から言葉を文脈から引きはがして持ってくるところに由来する。そこには当然、通常のテクストによっては実現されない分裂や衝突が生じ、それが榎本のテクストに通常の言葉の意味とは異なる音楽的な意味を付与するのである。「音楽的な意味」とは、言葉の通常のメッセージ的一貫性に垂直に切り立つ言葉の新たな意味であり、歌に対して伴奏が言葉以上の意味を付与するように、詩がその構文や語彙の選択を工夫することで獲得する言葉以上の意味である。連続的で一貫したメッセージ的な意味を超えた意味を詩が発するとき、それを「音楽的な意味」と
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