詩を救うための音楽??榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』/葉leaf
。音楽史的に言えば、古代ギリシアにおいて「ムシケー」と呼ばれたものは、音楽的に規定された韻文であり、そこでは音楽と詩が一体となっていた。T.G.ゲオルギアーデス『音楽と言語』の一節を引こう。
このようにギリシャ語の語句はそれぞれに固定した実体的な音を備えており、それぞれに固有の音楽的意志をもっていた。個々のシラブルは、伸ばすことも縮めることもできない固有の長短をもっていた。これを語る人にとってこれらのシラブルは、必然的に柔軟さを欠いた固体のように感じられた。古代ギリシャ語の有するこのような固体的対象的な性質、これが他の西洋の言語にはみられないギリシャ語固有の音楽的リズムにほかならなかった。
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