王国/そらの珊瑚
 
ある満月の晩、女友達が私の家にやってきた。シャンパンを片手に。何かのお祝い? と尋ねたら「まあ、そんなようなもの」とほほ笑んだ。酔っぱらうと虚言癖のある彼女は「やっとわかったの。わたしは王女さまだったの」と言った。「さて、もう寝る時間よ」といつものように私は取り合わなかった。

ほんとのところ彼女が友達なのかというのはまったくもって疑わしい。彼女の住所や電話番号を私は知らないし知りたいとも思わない。(もっとも友達の定義というものを私は正しくは知らなかった)彼女は平然と人の彼氏さえ盗ってしまうことのできる女なのだ。彼女のルールによると、それは罪ではないらしい。
それでいて何年か後、ちょうどいい
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