水島英己「小さなものの眠り」を読んで 〜引用を生きる〜/中川達矢
したらどうか、などと考えながら歩いていた。(中継)私が言いたいのは、我々の今、ここの場所性(それは我々の「主体」性とは違う)を具体化すること、それを大切に考えることからはじめようということだ。」
「ノート3」
このあとがきを読めば、私が今まで述べたことも無に帰するかもしれない。それぞれの場所を訪れるにあたって、水島さんは、場所を自分のものとして所有してしまうのではなく、あくまでも場所の場所性なるものを優先し、そこに自分を置くという姿勢でいる。その時、場所が積み上げてきた歴史に水島さんが浸り、過去と出会うことができる。現在にいる水島さんが場所を所有してしまっては、過去と出会うことはでき
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