香之手紙/影山影司
ると、中にはぎっしりと封筒が詰まっていた。
「これが、一番新しい手紙やわ」
箱の中から、一番上の封筒を取り上げる。
俺は洗い物で濡れた手を拭いて、手紙を開いた。
懐かしい匂いが仄かにした。薄紅色の紙に、細い罫線の引かれた便箋。そして、罫線より更に細いペン字が、書かれていた。字の大きさはまちまちで、二行使ったり、隣の字とやたら離れていたり……字が、震えている。
読みにくい文章を読むと、兄貴の言う通り、他愛のない世間話が書かれている。
窓辺の花が咲いたこと、最近やりたいこともなかなかできないという悩み、食事の話。暖かくて、いつも眠いということや、なかなか手紙を書く時間も取れな
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