香之手紙/影山影司
れなくなっていること。最後は『お返事お待ちしています』と、締め括られていた。
「返事が来んけん、もう三通も出してしもうたが」
兄貴が、はにかんで笑う。
開いた便箋に顔を埋め、嗅ぎ取る。紙の匂いと、三年前、慣れ親しんだ消毒薬の匂い。
手紙を封筒に戻して、兄貴に返した。
「兄貴、明日の帰りは夜にするわ。飲み足りんけん、飲もうぜ。焼酎もあるやろ?」
「お、珍しいが。ツマミないけん、買いに行こか?」
「そん手紙がツマミやが、もっと見しまいや。知らん間にそんなんしよってから」
その夜、兄貴と俺は、久々に酔い潰れるまで酒を飲んだ。
他の手紙も読ませてもらったが、どれも綺麗な
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