タワー・オブ・テラー/済谷川蛍
 
いる。男が生気の無い目でこどもたちを見上げようとした瞬間扉が閉まった。
  「もぉ、助けてよぉ」とカオリがしくしく泣いた。ケンジは膝を抱いてガクガク震えている。ナツオは「おかーさーん」と泣いている。想太は責任を感じていた。緊急用の赤いボタンを押そうか迷っていた。やがて「これ、押すよ」と言った。しばらく黙っていたカオリが頷いた。想太はプラスチックカバーを上げて赤いボタンに指を乗せた。カオリはナツオとケンジの手を握っていた。想太はおもいきってボタンを押した。パッと階数を示す横並びの数字がすべて赤色に変わった。そして照明が落ちた。ランプが青色に変わった。エレベーターの壁が消え去り、無限の星の光がこども
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