タワー・オブ・テラー/済谷川蛍
どもたちの周りに広がった。それはまさに宇宙空間だった。遥かな暗黒宇宙に、青く光る地球が見えた。そして急に宇宙空間全体が回った気がして、上下左右の概念が完全に無くなり、なんとも不思議な無重力の感覚に包まれ、こどもたちの意識が完全な闇の深奥に消えた。
目を覚ましたのはほぼ同時だった。4人は丸いソファーに横になっていた。バイキングルームから談笑しながら親たちがやってきた。そして想太の母親は「想太、帰るわよ」と言ったのだ。従業員の男は想太たちのほうは見ずに澄ました顔をしている。親子たちが階段を降りようとしたとき、急に従業員の男が無言で4人の一家を引きとめた。4人はびっくりしたが、男はソファーの陰からニンテンドーDSを拾い、それをケンジに手渡した。親がお礼を言うと男はぎくしゃくした感じで頭を下げ、再び元の位置に戻った。1階へ降りビルから出るとき、後ろで子供たちがはしゃぐ声が聞こえ、想太たちは反射的に振り返った。誰だかわからない子供たちの影がエレベーターの中へ消えていくところだった。
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