タワー・オブ・テラー/済谷川蛍
させていった。ドアが自動的に閉まった。まさにストンといった感じでエレベーターは3階分ほど一気に落ちた。エレベーターが急激な動きをするたびに、お腹の中を掃除機で吸われるような気持ち悪い感覚が起きた。そしてまた扉が開いた。また男の姿があったが、後ろを向いてギターを構えていた。頭には何も被ってなく、黒い髪の毛が見える。男が弦を弾き、ゆっくりと回転しながら正面を向いた。それはあの陰気な感じの従業員だった。やせ細ってさらに白く、唇が青い。死相を通り越して死人の顔だった。男は焦点の合っていないおぼろげな目で、恨み節とも哀歌とも思える自作曲を歌いだした。こどもたちは脅えた。ナツオはギャアギャアと泣きわめいている
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