タワー・オブ・テラー/済谷川蛍
しているほどだった。予期しなかったことにドアが開き、息も止まるほど怖ろしいものが目に飛び込んだ。スーツを着た男が廊下に立っていた。異様なことに、それは頭に古びた銀色のバケツをかぶっている。バケツはところどころ蹴られたようにへこんで錆びついている。いきなりその異様な怪物は身体中の節々をロボットのような動きで不規則かつ小刻みに激しく動かし始めた。それはまるで危険な病気に罹患してもがき苦しんでいるようにも、何かにとり憑かれているようにも見え、その呪術的な動きにこどもたちはボタンを押すことも忘れて互いに抱き締めあい阿鼻叫喚した。バケツ男は不吉な獣めいた咆哮をあげ、さらにわけのわからない動きを病的に悪化させ
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