生かされる事。/ヒヤシンス
 

あの晩、月は出ていたでしょうか。
風は無かったように感じます。
広い公園の芝の上のベンチに一人腰掛けていたあの晩です。
死が最も私にその身を寄せていたあの晩です。

私はどんな些細な言葉にも敏感でした。
どんな些細な視線にも敏感でした。
そのくせ人々の無遠慮な視線にはお構いなしで、
先をゆくあなた達の自転車を孤独な心でぼんやりと眺めていたのです。

これほどまでに人の心とは昂るものなのか、
これほどまでに人の心とは感情を消す力があるのか、
これほどまでに人の胸とは疼くものなのか、
これほどまでに人間というやつは冷酷になることが出来るのか。

私は私の携帯電話が何度
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