SCHOOL/済谷川蛍
人影がボールを追いかけていた。
「あの頃はさ、ほんとにみんな楽しんでたよね」
「うん」
「本当に友達は友達だったし、みんな心の底から幸せそうだった」
「うん」
「将来のことなんか予測できるものじゃないね。わたし、世の中があんな風になってるなんて全然思わなかった。何も見えてなかった。人も、建物も、学校以外にリアリティはなかった……」
竹中は何も返事が出来ずに眼下の広い校舎を歩く人々を眺めていた。
「人生は学校の延長のようなものだと思ってた……」
しばらく彼女の言葉の余韻が無言のゴンドラ内に残った。ゴンドラは乗り場へと近づいた。あと4周乗っていられる。竹中たちの前のゴン
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