岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
なる美」を抱えている。つまり、何を美とするのか、という選択の価値基準を持っている。そうした基準は、その批評家がそれまでに養ってきたものであり、「心の問題」である。批評は、作品の単なる記録ではない。批評家の記録でもある。作品の美と批評家の持つ「内なる美」とが一致した時、芸術とも言える批評が生まれるのであろう。つまり、批評もまたオリジナルであり、作品である。批評家と言う「内なる美」を持つ人間が書くからこそ、作品となるのだ。
 批評とは何か。それは、批評もまた作品となり、作品の記録だけではなく、批評家の記録でもある。

※余談
1.2012年2月に青土社から『批評とは何か』という著作が出版されて
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