岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
っているからだ。話が逸れたが、文学における理論は、オリジナル性をもたらす批評家のauthorityを希薄化させるものだ。物語論におけるプロップの「物語の類型」はまさにそうだろう。ある作品に対して、物語の構造を分析・解体し、物語を記号化する作業となる。それは訓練が必要なことではあるが、おそらく、その分析の結果は一様になるものだ。そこでは批評家による感動や関心は排除されてしまう。また、批評家のauthorityを希薄化させるだけでなく、作家のauthorityをも希薄化させてしまう。それはどういうことか。「物語の類型」は物語の構造を○○+○○+○○という図式化が目的となるが、作家はその要素を選択し、結
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