岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
わないコピー的な批評も存在する。それが理論を用いた作品の読解だ。端的になるが、自然科学における法則は、「いつ・どこで・誰が用いても」同じ結果が生まれる。ケプラーの法則、ボイル・シャルルの法則など。無論、法則が書き換えられることも起こる。それは、自然科学が人間の観察から生まれているからだ。人間の観察を元に、自然現象を説明するツールとして法則が生まれ、その法則は普遍性を持ち、「いつ・どこで・誰が用いても」同じ結果が生まれるものとなる。だが、ニュートン力学にしても、ユークリッド幾何学にしても、それでは説明しきれないことが新たに観察され、法則が新たにされる。それは、人間が生きる世界そのものも生まれ変わって
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