岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
にとって精神を美化することはもっとも大事でありまた力の要ることであるが、同時にその精神を護り立てている諸物象の様々な美を写すことはまた幸福なる喜びである」p.98
2.批評とは何か
先述したことを改めて述べたい。批評について考えたいことは、批評家は、書き手(作者)の立場を守るのか、読み手(読者)の立場を守るのか。劉生の「写実論」は、書き手の立場に重きがある。それも多少のエリート主義を感じさせるものであった。
この問いは、両者(書き手⇔読み手の擁護)とも答えになりうることだろう。書き手は、自らの手法や主張を擁護するために、自らが持つ特徴を讃え、これこそが真であり、美であると訴えることを批評
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