岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
p.92)である。何とも、答えになっていない答えである。

 「質の美もむろん、形を超えたものである。美である以上それは形ではない。ただ心に映ずるときもまたそれが表現されるときも、形に宿るだけである。畢竟美とは形に宿る形以上の形である」p.92

 この点でわかるのは、やはり劉生が重視していたのは、オリジナルとコピーの比較で写実を語るべきではないということだろう。無形の域とは何か。それはやはり「心の問題」に真意がある。画家は作品という一つの形を持って、見る人に美を提示するのだが、その美とは何か。

 「物の美ではない。作に籠る精神、または画因に宿る精神と言ってもよい」p.92

 
[次のページ]
戻る   Point(4)