岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
「真実」の領域となり、「心の問題」となる。おそらく、視覚の点から言えば、オリジナルに優るコピーは存在しない。それはただ単に似ているかどうか、という点でオリジナルの追求になってしまい、コピーはただのコピーに過ぎなくなってしまう。触角の点でも、コピーはオリジナルの触角を追求することで言えば視覚の点と変わらないのだが、コピーが触角を誘発させるものであれば、コピーもまたオリジナルとなりうる要素を持つと言えるのではないだろうか。
この点に関しては少々私の議論が強引だが、劉生は議論を進め、この質の美感の追求だけではなく、もう一つの深い無形の域があると述べる。それが、「写実における写実以上の域である」(p.
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