岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
人間の内部に意識されるものではなく、自然の形や色を見る中に誘発されてくるものである。いろいろな形を見て、そのうち一番好むものを選ることを知るのが、内なる美の目覚めである」pp.84-5

 これは先ほど私が述べた、美である自然物⇔自然物から美を見出す画家という関係を示している。つまり、自然物がただあるだけでは、美にはならず、自然物に触発されながら画家は「内なる美」を養い、その養った「内なる美」を持って自然物を選ることが必要になるという循環論にもなっているだろう。ただ、ここでどうしても目が行く表現は「一番好むものを選ること」ということだ。これは私が述べてきたauthorityとも言えるだろう。自
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