批評の言葉(メモ)/中川達矢
 
て耳にした時、文字として目にした時のニュアンス・雰囲気は異なるものではないだろうか。
 そうした出来事や知覚を語る言葉は、その出来事と知覚との語り手の距離を示しており、そもそも書かれた文章を目にした時、読者は、作者がその出来事や知覚に対して距離を取っている(過去を語っている)と思うかもしれないが、その語り方によって、出来事と知覚との距離を操作することができる。
 だが、無人称的な語りも存在する。物(オブジェ)だけがただひたすらと語られる詩は、語り手と物との距離がつかみづらい。その時、語り手は一時、語り手としての姿を消され、その作中世界を創造するものとしての作者が絵画を描くために筆をふるうものと
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