森林限界/月乃助
 
ちなは}


( 中央で、白々と砂があかりを はなち始める )


二人きつく抱きしめあう 子を亡くした夫婦や
ひとり 痴呆に佇む老人や
金しか食べられぬ 女やら


砂丘の果てに
朱の鳥居が、傾いでいたり、
日章旗のもと
血だらけの兵士たちがうずくまり、
涙する慰安婦が、股をひろげている


あそこにも、確かに人間限界の
世界があった


今は、


( 砂のうえに揺らぐ 椅子にかけた少年 )


少年 「期待という重荷をしわよせる 父さんが憎かった

蛇  「そうかい、母親はどうだい?

少年 「笑顔に体裁という鎧を引きずる 母さ
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