酔い泥船/……とある蛙
順調に河をくだっていたはずだが
気がつけばこの船は
豪華絢爛な泥船で
狸顔したチワワ数匹
キャンキャン喚きながら
不安定な船の中で走り回り
客の老若男女たち
口々にご立派なことを叫びながら
ばらばらにみな右往左往していた
終(つい)に船は沈みだした。
船に積んであった
秋田こまちや郵便物
高級なブランド服や
靴や帽子は
水に濡れそう、お釈迦になりそう
立派な市民の老若男女は
皆我先に逃げるときも
それをちゃっかり掠め取り
そのまま人を踏みつけて
自分の正義を振り回し、
ところが、舟が沈まなくなると
積み荷をそばにかき寄せて
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