4/24/はるな
 

水でした。
わたしは息をしました。
水の中でした。
水の中でわたしは息をしました。

実際の話です。
あるいは、
想像上のはなしです。

息でした。
はじめに見たものは、無数の息でした。
尊く浮かび上がる、あたたかくしめった、ときにはつめたい、でもやっぱりしめった、呼吸でした。
そして指でした。
忘れていました。
ずっと、忘れていることにしたのです。
でも、思い出しました。
最初の指は、暖かくもつめたくもなかったです。なぜならそれはちょうどわたしと同じ温度だったからです。そしてそれは、途方もなくやさしかったです。
それがやさしさでした。

ずっと、忘れてい
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