彼と彼女とわたしの海/石田とわ
 
   
しばらく歩くとぽつりぽつりと釣り人がいる。
彼と彼女が会釈をしながらその後ろを通りすぎる。
わたしもお辞儀をしながらそっと釣り人たちのバケツをのぞき込む。

今日は魚がいないようだ。

少し離れたところに私たちは腰をおろし、釣りの支度をはじめる。
と言ってもわたしはただ見ているだけで、彼女にしてもほとんど彼まかせだ。

彼は丁寧に餌の付け方から教えてくれるが、どうにも手がでない。
頭も尻尾もわからないミミズにしか見えない餌たちが苦手だ。            彼女は渡された釣竿にてきぱきと餌をつけていく。 
まごまごしているわたしを見かねて餌をつけてくれた。


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