彼と彼女の買い物/石田とわ
 

家ってそんなに簡単に買うものなの。
              
「だって父さんずっと借家でいいって言ってたじゃない」
そう、彼はずっと家は持たないと言っていたのだ。
              
「実はあの広告前にも入っていたんだ。その時もいいと思ったんだが
言いだされなかったら買う気にはならなかったろうな」

そうなると話は早い。
いつもはのんびりの彼女がいつの間にか支度をして待っている。

モデルルームには何組も見に来ており、まだ完成していない
マンションのこまかな説明があちこちから聞こえる。

彼と彼女の担当はまだ入社したばかりでと言いしどろもどろながらも
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