彼と彼女の買い物/石田とわ
「ねぇ、これよくない」
それはわたしへの返事と言うより、彼への投げかけだった。
彼女はそう言いながら広告を高くあげて、彼に見せようとする。
彼は丁寧に食材を冷蔵庫に詰めながら、ちらっと彼女の
しめす広告をみる。
「朝、見たよ」
「すごくいいと思う」
「買うか」
「ほんと!?お昼食べながら買いに行きたい」
ちょっと待って。
彼女が持ってるのはどう見てもマンションの広告で・・・
「父さん、あれマンションの広告だよ」
「駅から近いんだ。通学も今より楽になるよ」
わたしには信じられなかった。
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