彼と彼女の買い物/石田とわ
 
たしに優しく彼は言う。
いや、そうじゃないのだ。
買い物に行くのが嫌なわけではなく・・・。
出かかった言葉を飲み込む。
彼は彼女に主婦を求めてはいない。
言っても無駄なのだ。

そうしていつも通りに彼と出かけるわたしであった。


買い物から帰ると彼女もようやく起きだしたらしく
ソファでコーヒー片手に新聞広告を広げていた。
          
「おかえりなさい」
彼女はそう言って顔をあげるとまた広告をじっと見つめる。

「なにかいいものでも出てるの」
彼女が広告を見ること事態めずらしい。
買い物に行かない彼女はほとんど広告を見ない。
見る必要がないのだ。

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