彼と彼女とワインの夜/石田とわ
腑に落ちない。
誰かに優しくしてもらいたいときだってあるはずだ。
何も言わなくても「どうした?」と聞いて欲しいときだって。
そう思ったが彼には言えなかった。
誰よりも彼女を愛して、心配しているのは彼だから。
その夜は彼と彼女を残したまま、後片付けもせず部屋に戻った。
次の日の朝、彼女は例によって「なんで起こしてくれなかったの」と
慌てて起きてくる。
いつもの元気な彼女だ。
「もう、お風呂にはいって寝るように」って言ってくれればよかったのに
シャワーを浴びに浴室へ駆け込むそんな彼女の言葉には彼は耳もかさずに
知らん顔している。
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