彼と彼女の無口な食卓/石田とわ
 
ら引きずりだせないから。

二人は違う本を読みながら時々目で合図する。
「どうだ?」彼は聞き、にやりと彼女は笑う。
いつもこの瞬間自分がお邪魔虫のような気がするのだ。
ちらっと彼女が読んでる本の題名を覗き見る。
       
あー、これでまたあの本を読む羽目になってしまった。
       
彼女と彼の世界、そこに私もいるのだけれどもっと入り込みたくなると
どちらかが読み終えた本を手に取る。
もっぱら彼女が読んだ本ばかりだけど。
なぜって彼が読む本は難しくてわからないことが多いから。
彼にそう言ったらわからないことはわからないままにしておけばいい
いつか自然とわかる時
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