彼と彼女の無口な食卓/石田とわ
る時がくると
わかるようなわからないような事を言われた。
それ以来無理して難しい本を読もうとは思わなくなった。
いつか彼が言う「わかるとき」のためにとっておくのだ。
娘の話に相槌をうち、本を読み、彼が作った料理をおいしいと無邪気に
食べる彼女は世界一のしあわせ者だと思う。
そしてそんな二人に育てられたわたしも。
「ねぇ、そろそろ起きたら?もう2時になるよ」
いい加減彼女を起こさないといつまでも寝ている。
ごそごそと起き出し、猫のように気持ちよさげにのびをする。
きっとそのうちこう言いだすのだ。
「ねぇ、せっかくの休みだし今夜は外食にしない?」と。
こうやって家事が嫌いな彼女の休日はたいてい外食になる。
彼は「いいね」とただ笑うだろう。
戻る 編 削 Point(5)