彼と彼女の無口な食卓/石田とわ
 
リビングにあったテレビが壊れてから彼女と彼は「なくてもいいね」と
あっさりテレビのない生活に切り替えた。
文句を言う私には小型テレビを買ってくれたけど。

彼女たちは本の虫、活字中毒者だ。
ゆっくりと食事をしながら本を読むのが最高の幸せだと思っている。
わたしが中学になってから、食事中に本を読むようになった。
聞けば小学生の頃は我慢していたのだそうだ。
お行儀わるいよと言うと、「あともう少しだけ」と彼女はいい、
彼は「そうだな」と笑う。
       
知らず知らずのうちにわたしは学校で起きたあれこれを
彼女たちに語って聞かせている。
そうしないと彼女と彼を本の世界から引
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