彼と彼女の無口な食卓/石田とわ
食はなんでも早くておいしいのだ)
彼が夕食をつくるのは週に5回は下らないだろう。
そう彼女は家事が嫌いだ。
見ていると彼女はどうやら仕事にかこつけて、夕食ができた頃を見計らって
帰ってきている節がある。
食卓にお皿が並ぶのと同時に玄関から「ただいま」の声がするのだ。
いつでも彼は「おかえり」と静かに微笑む。
わたしだったらこんな奥さんはぜったいに嫌だし、なりたくもないけれど
うらやましいなとたまに思う。
彼は一度たりとも文句を言ったことがないのだ。
うちの食卓はいつも静かだ。
まずテレビをつけない、というかテレビがわたしの部屋にしかないのだ。
リビ
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