ブリキの森と紙の古城とウルサい湖畔の魔法/あおば
 
る恐れはないのでそのことは誰にも知られていないだが、野生種の犬だけが微かにその音を感知しては猿どもにも伝えようとおっとりとした遠吠えを開始する
その声を聞いた人類は煩い奴等だと銃口を定めて弾丸をぶっ放す
初速度に劣る弾丸は放物線を描き遠吠えの包絡線を掠めながら飛んで行き稀には野生種の耳許に落下することもある
落花生ならばすぐに口に咥えるのだが、鉛の弾丸では洒落にもならぬと野生種は人類の愚かさとサービス精神の欠如を恨み
何度でも遠吠えを繰り返すことになる
月の無い夜に聞こえる野生種の遠吠えの由来をこれほど正確に伝える文書は初めてだと紙の古城は太鼓判を押し、洛陽の紙価を高めたのだが
大衆紙
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