ブリキの森と紙の古城とウルサい湖畔の魔法/木屋 亞万
 
めることはできなかったが、泡の弾ける音には波の音のようにいつまで聞いても退屈しない心地よさがあった。
 ずっと注いでいるうちに、空にうっすらと雲が立ち込め始めた。やがて雲は空を覆いつくすほど広がって、ごろごろと稲光を出し始めた。押さえつけられたコップの不満が、空にたまっていくようだった。それでも注ぐのをやめないで、リスにも「ここで止めたら元の木阿弥だよ」と諭した。
 やがてぽたりと、ぽたりと雨が降り始めた。甘いあまい雨だった。男の子ははじめてのことに慌てふためき逃げ出してしまったが、リスは注ぐ手をやめなかった。そうこうするうちに目も開けていられないくらいの大雨になり、世界を飲み込むほどの大洪水
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