ブリキの森と紙の古城とウルサい湖畔の魔法/木屋 亞万
 
洪水となった。
 私とリスは炭酸の濁流に飲まれて、城のほうへと押し流されていった。紙の城はすっかり崩れ去ってしまって、何冊かの本だけがぷかぷかと浮かんでいた。その本に飛び乗って、筏のようにすることでリスは助かった。その背中を見届けて、私は炭酸の中に沈んでいった。深くふかく沈んで、炭酸の泡に輪郭をすべて溶かされて、完全にふやけきったところで目が覚めた。
 魔法が解けたのか、夢から覚めただけなのか、確かめるすべはないが、今でも目を閉じて耳を澄ませば、ブリキの森で聞いた炭酸の泡の音を思い出せるような気がするのだ。

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