出来れば四月一日に死にたいという男の話/……とある蛙
西洋ではエイプリルフールだって言うんだろう
その日は嘘を吐いても良い日だ
だから、私が死んでも誰も本気にしないだろう
きっと、
「いくらエイプリルフールだからって
そんな嘘はいけないよ」
と 誰かをたしなめる人が必ずでるだろう
だから私が死んだなどと誰も言わないだろう
そのため葬式には誰も来ないだろう
葬式は簡素でよい
誰も来ないからといって
死んだ私は淋しくはない
残された家族も楽でよいだろう
別に葬式で泣くことはない
泣いたからといって
私が生き返るわけではない
とっとと焼いて貰って結構だ
焼き場でも泣くことはない
何せ死んだ私は泣
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)