それぞれの雛/黒ヱ
 
柔らと冷やし
その身を真心のまま 脱がす
そこは 二人だけの寂しさ 

瞬きの間よ 悲哀の意味
長短は真逆し 記憶を疑ってしまう
廃れきれない物が また扉を開いた

「ねえ 声上げてしまいそう」
今を知れない 私はもう
祈りの意味も知らず
「もう一度 聞いて」

失った物を全て掻き集めて
重ね合わせた 数多の瓦礫
それを 未だの思惑に寄せて

縺れ合い弾けた糸は
繋ぎ先に在ったものを 忘れられず
「それだから」
澄み切った霜降る 空の下
受け入れられず 葉を千切る
眩暈を起こしてしまう
その赤さに



軽やかに 風雪の舞って
かしこむ身を包
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