ポトフ/月乃助
 
粉のような雪がふりだした

ながめるだけの 白い景色は、
確実なうつくしさと 堅実な
冷たさがある


雪はもう 私の部屋のなかにも
積もり始める
だから
私は、
青い柄のスコップを取り出し
雪を かき始める


隣の部屋では、オバもまた雪かきをしているらしかった
天城越えがきこえてくる
オバが雪かきには、きまって うたう歌


家のなかをいつもさまよっている
柱時計のペンデュラムの音が、
眠ってしまったように静寂をしらせ、
( きっとずっとこわれてる )


 スコップの音の響


男には、妻がいたし
女には子供がいた
ありふれた 雪
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