背中を見せた夢/まーつん
れてしまいたいような優しさを持っていながら、同時にそれを思いとどまらせるような警戒感を起こさせる巧みな動き。
やがて、その動きが止まった。弛緩と緊張の間でバランスを取りながら僕の背中の上で蠢いていた彼女の身体が、不意に力なくのしかかってきた。面白いことに、その時でさえ、彼女の重さは心地よく、優しい柔らかさが感じられたのだった。僕は彼女の死をどこかで予感しながら、ゆっくりと反転しつつ体を起こし、彼女が寝台から転げ落ちる前に、その身体を捕まえた。
予感は当たっていた。背中に口を開いた小さな赤黒い切り傷…まるで体積のないヒルか、黒く酸化した秋の枯葉が張り付いているようにも見える…刃物によ
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