野良犬の日々/済谷川蛍
しない。一瞬映った僕の姿に視線が引っ張られる。僕の過去、未来、現在、特に現在の僕が気になる。この若者はホームレスなのだろうか? 僕は何もしていない。人々は通りすぎる。先に進む。僕を置いて。一人も振り返ることはない。ふと思う。街路樹は、寂しさを感じることがあるんだろうか。
僕の身体は不潔だった。着ているものは汗でびしょ濡れになり、乾けばマシになるが、街を歩くにも、電車の移動にも自分の体臭が気になった。特に足元から悪臭が漂う。ネカフェの個室に入るとその臭いしかしなくなる。どういうわけか、シャワーを毎日浴びれなかった。どういうわけか、無一文になることが多かった。
僕が門を叩いた派遣会社は時給千
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)