『万物理論』とsex/佐々宝砂
葉遣いはもともとお上品とは言いかねるし一人称代名詞が「僕」か「俺」だから、そのままでいいと思う。それとも声だろうか。声をかえるのはむずかしい。でも、そのころ私の声域は、ソプラノからテノールくらいで、努力すれば常に低い声で喋ることができた。のどを鍛えていないのでもう高音は出ないが、低い声なら今も出る。もっとも、女にしては低い声という程度だ。男の声にしては高い。でも私より声の高い男なんてたくさんいる。なにがちがうんだ。なにが。な・に・が?
今は、多少、わかる。なにがちがうか、なんとなく、わかる。自認の問題なのだ。私は、「私は男だ!」と言い張ることができない。「私は女だ!」と言い張ることはできるが
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