木は孤独だろうか?/すみたに
か」と言って許可した。そして私は彼女の手首を掴み体育館から抜け出ると黙って廊下をまっすぐ進み、階段手前の突き当たりにある女子トイレの眼の前に来たところで止まり、手を離して「待ってるよ」とだけ言った。彼女は黙って頷いて中へはいって行った。バタンと個室の扉を閉める音が意外なほど大きく鳴った。不図脇にある階段を見上げると窓の外は真っ白で明るくて目が眩んだ。すっと視線を反対の体育館の方へ向けると残像が赤や緑の不明瞭な影となって現れた。向こうはずっと暗い、ここも暗い、ただ外の世界はとても明るい、昼間だというのにこの中は杳として晦冥としている。
随分長く感じた彼女の不在も、再び鳴った意外なほどに大
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