木は孤独だろうか?/すみたに
に大きな音によって気付きがあり、手を洗うために蛇口を捻り、水が流れ、手を差し出したために無作為な流れに煩わしさを感じたために、それは錯覚であって実際はごく短い時間だったことを悟った。戻るとき私は彼女に訊いた。
「君の名前は何と言った?」
私は自分が思う以上に剣呑な表情を浮かべていただろう。彼女の顔も引き攣っていた。
「え?」
咄嗟に出た言葉はそれだけである。私は再度同じことを訊いた。彼女は今度は逆に微笑みながら自分の愛らしい名前を答えた。決して珍しくのない苗字と名前の組み合わせなのにもかかわらず彼女にしかない名前なのは一体なぜだろうか。私がまだ幼く、世界が極小だからだろうか。彼女の名前
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)