あずきの恋人 (連載?)/たま
が帰ってしまったら、イチローはわたしとこの家猫になればいい。おとうさんはあまり猫が好きじゃないけれど、イチローのことは知っているから、だめとは言わないはず。イチローはもう、わたしとこの家族なんだから。
お昼ごはんを食べてから、鈴木さんのお家へ行った。
玄関のドアが開いていて、なかを覗いたらきのうあったはずの、下駄箱や、台所のテーブルや、冷蔵庫なんかがなくなっていて、まるで、空き家みたいだった。
「こんにちは……。」
台所の奥の部屋から、鈴木さんが顔をだした。
「あら、あずきちゃん、いらっしゃい。」
鈴木さんは雑巾を持っていて、窓や畳のふき掃除をしているみたいだった。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)