あずきの恋人 (連載?)/たま
 
が帰ってしまったら、イチローはわたしとこの家猫になればいい。おとうさんはあまり猫が好きじゃないけれど、イチローのことは知っているから、だめとは言わないはず。イチローはもう、わたしとこの家族なんだから。
  
 お昼ごはんを食べてから、鈴木さんのお家へ行った。
 玄関のドアが開いていて、なかを覗いたらきのうあったはずの、下駄箱や、台所のテーブルや、冷蔵庫なんかがなくなっていて、まるで、空き家みたいだった。
「こんにちは……。」
 台所の奥の部屋から、鈴木さんが顔をだした。
「あら、あずきちゃん、いらっしゃい。」
 鈴木さんは雑巾を持っていて、窓や畳のふき掃除をしているみたいだった。

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