あずきの恋人 (連載?)/たま
 

「さぁ、あがりなさい。もう、なにもないけど、まだ、あたしの家だからね。」
「うん……。」
 奥の部屋も空っぽだった。ベランダには履き古したサンダルが一足あるだけ。
「朝からね、古道具屋さんにみんな持って行ってもらったんだよ。ほとんどゴミだけどね。あ……、そうそう、あずきちゃん、ゆうべはありがとうね。イチローはよろこんでいたよ。」
「え、ほんとに?」
「うん、あずきちゃんに会えてよかったって……。」
 でも……、
「ねぇ、鈴木さん、イチローはいつか人間にもどれるかもしれないって言ってたけど、鈴木さんが帰ってしまっても、ほんとうにもどることができるのですか?」
「そうだねぇ、あたし
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