あずきの恋人 (連載?)/たま
顔をこすりつけたの。
鈴木さんがうつむいたまま、泣いていた。
「ふむ、ふむ。そうか、それがいい。それがいいとも。じゃあ、あずきさん、その子をわしの腕に預けなさい。」
そう言って、大王さまはおおきな両腕を、わたしのまえに差し出した。わたしはその腕のなかに、イチローをそっと預けたの。
大王さまは抱きしめたイチローの、ちいさな頭のうえに右手をかざして、しずかに目を閉じた。
そしたら、ぼんやり、大王さまのからだがオレンジ色にかがやきはじめて、イチローと、大王さまはオレンジ色のひかりの輪につつまれた。
あ……、イチローのからだが、オレンジ色のガラスみたいに透けてゆく……。
イチロー
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