あずきの恋人 (連載?)/たま
 
ってちょうだい。」
 鈴木さんはそう言って、イチローをわたしの膝のうえに乗せたの。イチローはまたすこし、やせたみたいだった。

「さぁ、ぼちぼち時間だね。」
 鈴木さんはおおきな紙袋を手にとって立ちあがると、バックネットの裏をまわって、グランドに向かってあるきはじめた。わたしも、イチローをだいてあとをついて行った。風はなかったけれど、とても涼しくてしずかな夜だった。
 鈴木さんは三塁ベースのあたりで立ち止まった。しばらく、ふたりならんで立っていたけれど、わたしはわけがわからなくて、小声で聞いたの。
「舟って、海からやってくるの……?」
「そうだよ、おおきな、おおきな海からね。……ほら
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